気付いてよ
今では、ゲーテの詩集や、名言がとても好きになっていた。
でも、今日はそんなお気に入りの本を手に取ってみても、全く頭に入っていかない。
パタリ、と本を閉じて、ふと窓の外に目をやった。
外は大分日が短くなった所為か、つい一週間前のこの時間より、さらに暗くなったように感じた。
そろそろ行こうかな。
重い重い腰を上げて立ち上がる。
本を元に戻すために、ページをぱらぱらと捲りながら本棚に向かう。
その時一つの格言が目に入る。
“おまえの本当の腹の底から出たものでなければ、人の心を動かすことは断じて出来ない”
本棚の数歩前で立ち止まる。
もし、私が本当に朋を好きだということを、今日伝えることが出来たら、少しは朋の心を動かすことが出来るかもしれない。
心を動かすっていうことは、もちろん、私を好きになって貰うことだけじゃない。
朋の来る者拒まずな性格を少しでも改めてくれたら、それだけで私は救われた気持ちのなる。
自分の都合の言い様に解釈してしまったかもしれないが、なんだかゲーテに背中を押してもらった気がして、そのまま図書室を後にした。