「好きになるはずなかったのに」
「そうだ、円谷さん言ってたよ」
「何を?」冬実は簡単に描けるな、
と、得意げに微笑みながら、
ひょいと冬実に視線を投げた。
「露子のマンガ見たいってさ!だから渡したよっ」
「あ、そう……」
ぽきっとシャーペンの芯が折れ、そそくさと連続ノックをしながら発した露子の声はどこか上ずっていた。
「…感想は?」
「なーんにも!」冬実は頬づえをしながら、
これでもかという位の素晴らしい闊舌で答えた。
「!?何にも!本当に!」
二度見、二度言い。露子は呆気にとられた。
作品に感想がないというのはどういうことなのだろうか!
またもや、ぱきっと手元で折れる音がした。
わざとしているのではないのだが、
何故だかあの名前を耳にしたり、あの人の事を考えたりすると手が強張る。それは何故か…心当たりを語って行こう…。