「好きになるはずなかったのに」
それは二週間まえの話。
「はーい!今開けるね!」
「うはよー」
玄関を開けて出てきたのは、気合いの入った冬実。
つけ睫毛だってバッチリしているし、
いつもは仕事柄きちっとおだんごにしている髪も下ろしてみたりして、
化粧乗りも抜群だった。一体どんな技を使ったのやら。
「ねぇ、ちょっと“ここ”さ、ピンクすぎやしない?」
糸目で冬実を見て、自分の頬をつんつんした。
「なーにをおっしゃいますか!つゆ!おだまり!いいから、上がって!」
「はい!?何で?もう出かけるんじゃないの?
今出ればいい電車あるし!」
冬実は意味ありげな表情をした。
さては何か企んでいる。
露子は反射的に後ずさりをしたが、時すでにおそし。
既に“冬実地獄”に足を捕えられていた。
店とは違う、ジャングル2DKに吸い込まれ、
(確か、結構ふんぱつをした)ドレッサーへと乱暴に誘われた。
「あら……露?
もしかして寝てないんじゃないの?
酷い顔…おっと」
背後から覗きこむ冬実は、手際良く露子の髪をとかし始めた。