69
「待て……!

 シックス・ナイン!

 戻って、来い!」


「いやだ!」


 九谷から、オリヱを引きはがすまでは、僕は捕まるわけにはいかなかった。

 だから、まず。

 叫びながら追ってくる武蔵川自身から、僕は逃げる必要があった。

 雪と一緒に、武蔵川に借りた、長靴も。

 自分の主の手伝いをする気になったのか。

 ずぼずぼと、雪の中に留まりたがり、僕が走るのを邪魔をする。

 もたもたしているうちに、武蔵川が携帯を取り出した。

 応援を呼ぶのか!?

 厄介な相手が増える前に、一歩でも、遠くに逃げようと、僕は焦った。

 慌てて、ごきゅっと、吹きだまりに足を踏み入れれば。

 雪が、捕えて放さずに、ぶかぶかだった武蔵川の長靴は、脱げてしまい……

 気がつけば、僕は。

 真っ暗闇の吹雪の雪原を、裸足で駆けていた。









 

 

< 17 / 49 >

この作品をシェア

pagetop