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 思わず、こくり、と。

 僕が飲んだ、生唾に気がついて。

 オリヱが、可笑しそうに言った。


「なあに?

 シックス・ナイン。

 もしかして、何事も、優秀なあなたでも、これは緊張するの?」


「……初めてなんです、オリヱ。

 あなたが満足するように……

 その、上手くできるか心配で……」


 情けないけれども、本当のことだから、仕方がない。

 もしかしたら、震えているかもしれない僕の声に。

 オリヱは、励ますようにほほ笑んだ。


「あなたが初めてだって、あたしは判ってるから大丈夫。

 最初は、プログラム通りに動いていれば、それでいいから。

 慣れてきたら、あたしが最も悦(よろこ)ぶように、考えて動いてね?」


「はい、オリヱ」


「それと……最初に言っておくけど。

 あたし、ちょっと、Mっ気があるみたいなのよねぇ。

 だから、あなたには、個人的な趣味で、少しSっぽいやり方を教えてあるわ。

 途中で、あたしが『ダメ』とか『やめて』とか拒否の言葉を使うかもしれないけれど。

 セックスの最中は、止めないでいいわよ。

 本当にダメなトキは、強制終了するから。

 それが来るまで、遠慮なくやって?」


「はい、オリヱ」


「……やあねぇ。

 シックス・ナイン。

 あなた、緊張しすぎてない?

 そこらに転がってるフツーのアンドロイドみたいな、受け答えになってるわよ?

 リラックス、リラックス。

 あたしは、半分、遊びのつもりだし。

 あなたは、気楽にしてくれれば。

 あたしをキモチ良くさせる方法も。

 あなたがキモチ良くなる方法も。

 ちゃあんと教えてあげるから……」

 
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