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 それから、三日間。

 僕らは二人、ベッドの中で抱きしめ合って過ごしてた。

 止まない吹雪の音を聞きながら。

 素肌同士を重ねあわせて。

 僕は……僕らは、とても幸せだった。




「シンのキスって、本当に甘いのね……?」


 長い口づけのあと。

 桜はうっとりと目を細めてそう言った。


「うん……」


 そうだよ。

 だって、君が律儀にわずかな食物を分けてくれるから。

 しかも、食べないと怒るから。

 僕は自分の分の食物をアミノ酸とブドウ糖と繊維に分解してカラダの中に蓄えてた。

 そして、キスをするたび。

 想いのたけを桜のカラダに注ぐたびに。

 唾液や精子の代わりに、そんな栄養素を桜の粘膜にしみこませている。

 桜が生きるために。

 桜を生かすために……

 小屋には、薪とガソリンの備蓄は、ほどほどにあり。

 僕の活動エネルギーは。

 感電を心配する桜が寝静まった後に。

 こっそり動かす、自家発電機から充電すれば、問題がなかったけれど。

 食料の類は、殆どなかった。

 桜の持って来た食料の他は。

 せいぜい。

 誰かが置き忘れたかのように落ちていた賞味期限の切れた乾パンの缶が一つだけで。

 いつ止むか判らない、山吹雪を乗り切るには、難しいはずだった。

 なのに。

 愛してる桜がずっと、僕の腕の中にいる今は、とても幸せだったし。

 桜も、この過酷な状況が、嬉しそうにも見えるほど、穏やかに。

 安心している表情で、過ごしてた。


「ずっと、こんな日が続けば、良いのに……」


 そう、どちらともなく言って、二人で笑う。

 
「ちょっとお腹がすくけど、一生のうちで、今が一番幸せかも……」


 桜がこっそり僕の耳にささやく。


「吹雪が止むまで、何もできないもの。

 先のことは、何にも考えず……

 一日、ずっとシンの腕に包まれて、ときどきシて。

 また眠るだけでいい、なんて。

 らぶらぶのハネムーンみたいだわ」


「そうだね」


 ハネムーンかは、今ひとつ謎だけど、らぶらぶってところが良い。
 
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