君の温もり
「あのっ…聞いてもいいですか?」
そんなあたしの少し張り上げた声に先輩は視線をこっちに向ける。
「何?」
「あの…先輩の名前聞いてもいいですか?」
さっきよりも控えめな声を出し少し俯くあたしに先輩は茫然と見つめる。まるで聞いてどうすんだって言ってる様にも思うその表情。
言うんじゃなかったって、言った後に後悔した。
でも、やっぱし先輩の名前が知りたかった。名前くらいは知りたいと思った。
ぼんやりと見つめる先輩の視界からゆっくりと視線を落とした途端、
「…マ」
小さく呟かれた言葉に思わず視線を上げる。
「え?」
「ソウマ」
「ソウマ先輩…」
「そうだけど」
そう言った先輩は小さく微笑む。
その柔らかな笑みがあたしは好きだと思った。
「あ、あたしはミウです。ま、また来てもいいですか?」
間違った事は決して言ってはいないと思ったのに何故か先輩は馬鹿っぽくフっと笑う。
首を傾げて見つめるあたしに、
「いつも来てんだろ」
率直な答えを投げて来た。