君の温もり

見てはいけないものを見てしまった。

やっぱ雨は嫌い。全然いい事なんて起こらない。


先輩に彼女が居るかどうかなんて考えた事もなかったけど今思えば居てもおかしくないと思った。って言うか居ない方がおかしいと思った。

居て当たり前な存在。

真っ赤な傘の下で歩く二人の背後をあたしはぼんやりとずっと眺めてた。


二人の姿がなくなってもあたしはその場所から暫く動けなかった。足が前に進まなかった。

相当ショックだった。ショックと言うよりも哀しかった。なんだか今までの情熱が一気に覚め、雨で全部流れ消えたみたいだった。


どれくらい佇んでたのかも分かんなかった。ただ気づいた事と言えば両足がベタベタになるまで佇んでいたと言う事。

そして身体がカナリ冷えきってた。ブルっと身体が震えあがった時、完全に意識が戻りあたしは今までずっと止めていた足をゆっくりと進ませる。

バチバチと傘に弾けていく雨粒が異様に重く感じる。足取りも重いし身体全てが何だか重く感じる。


結局家に着いたのは学校を出てから2時間半は経過していた。

学校から駅、電車から家までの道のりを考えても1時間弱の所がその倍は余裕で過ぎ去っていた。


身体は冷たいまま、心も冷たくなったまま。案の定あたしは見事に風邪を引いてしまった。


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