君の温もり
「あいつは別れた女」
思わず考え事に深入りしてたあたしに先輩は小さく呟く。
「え?」
「だから前の女」
「あー…そうなんですか」
と、しか言いようがない。
何であんな綺麗なのに別れたんですか?とは思ってても聞けなかった。いや、むしろ聞きたい。だけどここまで聞いたら先輩に不快心を与えてしまう。
「はいよ」
その言葉とともに差し出されたのはさっきまで頭上に差されてた傘で、いつの間にかあたし達は駅の屋根に身を隠してた。
「あ、えっと…」
「家まで傘ねぇだろ?」
「せ、先輩は?」
「俺、電車じゃねぇし。走れば10分で着く」
「だ、ダメです。雨凄いし先輩が差して帰って下さい。あたしは大丈夫だから。駅から家まで5分もないですから」
「5分なくてもこの雨じゃズブ濡れになんぞ」
「だったら走って10分の先輩よりかは全然マシです。って言うかその傘くれるのなら先輩の傘、あたし買ってきます」
目の前に見える駅の売店を見て足を進ませた時、
「おい、待て待て。そんな無駄金使うなって」
先輩はあたしの腕を掴む。
必然的に立ち止まった足とともに先輩を見上げると先輩は困った顔をし軽く息を吐き捨てる。