君の温もり
間違った。
そう思った時には遅かった。こんな事、聞くんじゃなかったって先輩の顔を見てすぐに思った。
ほんとに聞いてどうするって言う内容。
「あ、いえ…何でもないです」
黙る先輩にそう言うしかなかった。
隣から聞こえて来たのは吐き出した煙とともに出された先輩のため息。吸い終わったタバコを足で踏み潰した先輩はもう一度新しいタバコに火を点けた。
また沈黙が流れる。さっきまで普通だったあたしたちの空間があたしの些細な言葉によって空気を乱す。
最悪。何言ってんだろって思っても今更仕方がない。
終わったことは水に流そう…なんてのも思えないこの状況。この場から立ち去る勇気さえもないあたしの耳に届いたのは暫く経ってからだった。
「振られたから」
タバコを咥えたままそう呟く先輩に思わず目が見開く。
「えっ。ふ、振られたんですか?」
先輩が?この先輩が振られる事あるんですか?と言いたい。
「あぁ」
「な、何で?」
「何で?」
オウム返ししてきた先輩は眉をグッと寄せてあたしを見た。
「あ、いえ…何でもないです」
つい最後の言葉がしりつぼみになってしまったあたしはまた視線を逸らし遠くを見つめる。