君の温もり

その日を境に、あたしは先輩とは会う事はなかった。

もう一度会いたい。心のどこかでそう思うあたしの気持ちに理性が動き、屋上に居ないのならば食堂、あらゆる場所を探してみたけれど会わなかった。


次の日もその次の日も晴れの日は屋上に向かったけど、あたしは先輩に会う事はなく、その挙句6月独特の梅雨ってやつに出くわされ結局2週間も会う事はなかった。


この2週間、あたしの頭の中は先輩でいっぱいだった。たった1回しか会っていなくてあまり話していないのに何故か先輩が気になってて、あたしの頭はいつも先輩だった。


名前も知らない先輩にいつの間にかあたしは先輩を想いつめてた。


「来ないのかな…」


そう思った晴れのある日。

何気なく開けた屋上のドア。足を踏み入れてそこから見える人影に、あたしは何故かドキっとする。

まだ先輩とかも分かんないのに、あたしはそのベンチに寝そべる人影が先輩だと思い込んでいた。

足をゆっくり進ませると思った通り、仰向けで寝転んでるのは先輩。


その先輩を見ただけであたしは会えた事に顔が緩んだ。


目を隠すように腕を乗っけている先輩は眠っているのか分かんないけど、あたしは先輩が寝ている少しの空間に腰を下ろした。

視線を落とすと先輩の端正な顔がある。その綺麗な顔に触れてみたいとでも思ってしまった。


先輩から視線を逸らし大空に目を向ける。ゆっくり流れていく雲に時間が過ぎ去っていってる事を教えてもらっているみたいだ。

ちょっとの間、止まっていてほしい。少しの間、時間が止まっていて欲しい。だったら少しでも長い間、先輩と居れる。そう思う自分は馬鹿なんだろうか。


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