鏡の中の僕に、花束を・・・
「ありがとう。」
余計な事を言うと、彼女を傷つけてしまいそうだ。だから、それだけ言うと僕は黙った。楽しいはずのデートがいきなり台無しだ。
「千代田君?」
沈黙に耐えられなくなった彼女が口を開いた。
「何?」
胸にあるムカつきは、やや収まってきた。けど、長くは話せない。
「こう言う所に来るの、はじめて?」
「うん。」
息を吸った。
「子供の頃も連れて来てもらってないし・・・。」
「そう。」
「ごめん・・・。」
訳もわからず謝った。
「ううん、責めてなんかないよ。こっちこそごめんね。そう言うの聞かないで、いきなりあんなの乗せて・・・。」
ムカつきが戻ってきた。
「・・・。」
「千代田君?」
「ごめん。」
僕はトイレに駆け込んだ。
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