白銀の女神 紅の王



キィー……

一瞬扉を開けようか迷ったが、護衛も下がらせた手前後戻りするわけにもいかない。

そして常になくそっと後宮の扉を開き静かに入る。



するとそこには見慣れた光景。

エレナはベッドではなくソファーで寝ていた。

体調が回復していない時はベッドで寝ていたエレナだったが、回復した今は律儀にもまたソファーで寝ている。

いつものように自分の体を抱きしめながら。



そっとソファーで眠るエレナに近づけば…




「んっ……」


ソファーの上でエレナがモゾッと動く。

その拍子に体に巻いていた布団がスルッと落ちる。



チッ……

暫くの沈黙の後、心の中で悪態をつきながら布団を拾う。




そしてエレナの体に布団を掛け直した時――――



「んっ……ジェ…ス………」

「ッ……!」


夢見心地でエレナが呼んだのは今一番聞きたくない者の名だった。




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