白銀の女神 紅の王
やはり城下になど行かせなければ良かった―――
エレナは俺が買った女だ。
それを奪うだと?
そんなことは許さない。
身体の奥底からふつふつと怒りに似た感情が沸き起こる。
そんな激情をなんとか抑えながら静かに眠るエレナを見下ろす。
月明かりに照らされ、銀世界に溶け込みそうなその容姿は息を飲むほどに美しかった。
クソッ………
なぜ俺がこんな女に振り回されねばならない?
支配しているのは俺であってエレナではない。
何だ…この感情は………
固く握りしめていた拳の力を緩め、ゆっくりとエレナに手を伸ばす。
指先に触れる絹糸の様な髪。
白く透き通るような肌は柔らかく滑らか。
頬に手を滑らせればその色に反して温かな感触。
宴の夜から目を覚ます時まで、冷たく、色のなかった頬。
目を覚ました時に確かに感じたのはまぎれもない安堵だった。