白銀の女神 紅の王
「っはぁ…」
途端に口から入って来た空気が肺を満たす。
夜の空気だからか少し冷たかった。
「助けを呼ぶなどと言う変な気は起こすなよ。怪しい動きをしたら…分かっているな?」
男の問いにキッと瞳を鋭くさせる。
しかしそんな虚勢は一瞬の事だった。
両手首をいとも簡単に取られ、強い力に引き上げられ、ソファーから無理やり立たされる。
「ッ………!」
無理やり引き上げられた痛みに眉を寄せるが、男は息をつく暇もなく窓の方へ歩き出そうとする。
いや…行きたくない………
「ぃゃ……ッ」
カラカラの喉から絞り出す様にして小さな声を上げる。
そして精一杯の力でその場に踏みとどまろうとした。
「行きたく…ない…」
ここにいたい。
ここから離れたくない。
いつしか温かで優しくて心地良い場所となった後宮。
ここが私の帰る場所なの……