白銀の女神 紅の王
「お前自分の立場が分かっているのか?」
両手で逆方向へ引っ張る力に男が振り返り、低い声で唸る。
ビクッと震え全身から力が抜けていくような恐怖が襲う。
「お前は俺に従うしかないんだ」
そう言って喉元に短剣の側面を当てられる。
その鉄の冷たさに鳥肌が立ち、恐怖に拍車がかかる。
何も出来ない無力を感じ、頬に一筋の涙が流れる。
「ふっ……っく…」
死にたくない。
そんなこと前は思わなかったのに……
この世から消えたとしても誰も困らない。
意味のない存在なら消えてしまいたいとさえ思った。
なのに今は死にたくないと思っている自分がいる。
ここには私の存在に意味を与えてくれた人たちがいて…
初めて自分の存在が愛しいと思えた。