白銀の女神 紅の王



だから……


この男のいいなりになって連れ去られるのは嫌だけれど。

この王城から離れるのは嫌だけど。


私はここで死にたくない…

そしてそれを望むなら目の前の見知らぬ男に従わなければならない。

覚悟を決めて腕の力を緩める。

眉を寄せ零れ落ちた涙は頬を濡らしていた。




「やっと従う気になったか」


ダラリと全身から力が抜け、俯く。

その拍子に床に涙がこぼれおちる。

今度こそ男の行くままに従って歩き出す。



その時だった……





バンッ―――――

今まで後宮に足を運ばなかった人が。

十日も私を避け続けた人が。

いつもの様に荒々しく扉を開けて後宮へ入って来た。




「何をしている」


地を這うような低い声。

後宮の時間が止まった――――


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