白銀の女神 紅の王
しかし………
「お前には聞いていない。俺は陛下に聞いているんだ」
男から返って来たのは冷たい視線だった。
黙っていろ…と短剣を更に近づける。
先程の様に切りつけられる事はなかったが、皮膚を切り裂いた時の痛みを思い出し、それ以上何も言えなくなる。
お願い……何も言わないで……
そう想いを込めて視線だけでシルバを見つめれば、一層凄味を増した紅の瞳が鋭い視線をよこす。
「お前こそ何故エレナを連れ去る。目的は何だ」
シルバが男に問う。
上手く避けてくれたことにほっと安堵しながらも、シルバの言葉に男を見上げる。
先程は短剣を突き付けられてパニックになっていたからか、よく考えずに連れ去られようとしていたけれど、何故私を連れ去ろうとするのかが気になった。
「俺のボスが会いたがっている…とだけ言っておこう」
私に伝えた事をそのままシルバに伝える男。
「お前のボスは、闇にまぎれて人さらいをしなければならぬほど後ろめたい御身分の様だな」
シルバはフッと男を蔑む笑いを零しながら、皮肉を込めた言い方をする。
「まぁ、そう言う事だ」
今や完全に自分が有利だと思っているのか、男に先程の様なうろたえ様はない。