白銀の女神 紅の王
持てる力の全てで男の手を振り切りシルバの方へ駆け出す。
シュッ――――
「ッ………」
首筋を少し切った感覚に眉を寄せるが足は止めない。
「ッ!?クソッ……!」
男は苛立たしげ悪態をつく。
やっぱり……
首元にあてられていた短剣は深く抉られる事はなかった。
頭の隅で冷静にそんなことを思いながらも、体は目の前のシルバに駆け寄ることで必死だった。
「シルバッ……!」
名前を読んだ瞬間、瞳に溜まっていた涙が零れおちる。
シルバは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに紅の瞳を鋭くさせ、腰に携えていた短剣を抜きとる。
そしてそれを迷いなくこちらへ投げた。
その短剣はすぐ横をかすめて、後ろへ飛んでいく。
ザシュ――――
「ぐはッ……!」
背後で男の呻き声が聞こえた。
そして、私は広い胸へ飛び込んだ―――