白銀の女神 紅の王
いつものように執務を終えたのは夜中の事―――
一週間前から仮眠をとっていた部屋へ行くその足で、後宮に立ち寄る事は日課になっていた。
自分から避けているのに可笑しなことだ…と心の中では苦笑しながらも、欠かすことはなかった。
今日もいつものように後宮の扉をそっと開こうとした時―――
中の様子がおかしいことに気付づく。
後宮から聞こえるエレナの声と男の声。
「ぃゃ……ッ」
扉の向こうから聞こえる小さな声。
「ふっ……っく…」
くぐもった声に、頭の上に血が上るのを感じ……
気付いた時には後宮の扉を荒々しく開けていた―――
そして中に入るなり目に入ったのは、黒いマントを羽織った男と銀色の瞳に涙を浮かべたエレナ。
「何をしている」
自分でも驚くほど低い声が後宮に響いた。
「何をしている…と聞いている」
明らかに部外者の風貌をしている男に、抵抗なく腕を取られているエレナに苛々としながらも再度口を開いた。