白銀の女神 紅の王
そして今度は剣を取り男へ向ける。
「その女を返せ」
左肩の短剣を抜き冷や汗をかきながら男も剣を構えるが……
「返せ?コレは元々俺のものだ」
エレナを強く抱きよせながら、フッと怒りを含ませた笑みを浮かべた。
男がチッと悪態をつき一気に間合いを詰めようとしたその時―――
バタバタッ――――
後宮の外から複数の足音がこちらへ近付いてくる音が聞こえた。
恐らくこの騒動に気付いた者が助けを呼んだのだろう。
これから獲物を狩ろうという時に……
エレナをかばいながらでも男一人くらい何とかなる。
しかし腕の中で震えるエレナにとっては良かったのかもしれない。
「クソッ…ここまでか」
どんどん近付く足音に男は見切りを付ける。
「またお前を迎えに来るからな、エレナ・マルベル!」
男の陳腐な捨て台詞に自分の体に抱きついているエレナの方がビクッと震える。
そして窓まで後退した男はそのまま後宮から去った。