白銀の女神 紅の王
名を呼ばれピクリと体を揺らすものの、返事をしようとしないエレナ。
体に回されたその腕は離れるどころか、更に力を込めて抱きついてきた。
「ッ………!」
エレナの行動に一瞬驚くも、すぐに理由が分かった。
カタカタと震える小さな体。
声には出さないが、頭を埋め時折小刻みに肩を揺らしていることから、泣いているのだという事が分かる。
「…………」
そんなエレナを腕に抱き、何も言えず黙り込む。
こんな無謀な事をしたのだ。
当然勝算はあったのだろうが、怖かったのだろう。
エレナは男でもなければ、兵士でもない。
ただの一般人だ。
短剣をあてられ、脅されれば、恐怖に震えるのも無理ない。
視線をウィルとニーナに移すと、困ったような表情で視線を交わしている。
「エレナ様、もう大丈夫です」
「そうですよ。もう男はいませんから…」
二人からそっと促す様に声をかけれたエレナだったが、声に出して返事はせず、子供が何かを嫌がるように首を振った。