白銀の女神 紅の王



男の心の中を呼んだ時、見えたもの。

それは私が男から逃げ出すきっかけになった。



あの時男の頭に見たもの―――

それは私をボスの元へと連れて行かなければならいと言う焦りと、ある命令。




“生け捕りにしろ”



男の頭の中はその事でいっぱいだった。

生け捕りということはつまり、ボスの元へと連れて行くまでは私の命は奪わないということ。

そして、男の心の中に占めていたボスへの恐怖から、“生け捕りにしろ”という条件は絶対だと思った。


だからこそ行動に移せた。

実行に移せばやはり男は私の首筋に食い込んでいく短剣を慌てて離したのだった。




けれどやっぱり怖かったのも確かで……

今でも思い出せば体が震える。

男の体を突き放し逃げ出した時は必死だった。

だから咄嗟に口にしてしまったのかもしれない。




『シルバッ……!』



一度も呼んだ事なかったのに……



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