白銀の女神 紅の王
バンッ――――
久しぶりに耳に届くこの音。
後宮の扉をこんな風に開ける人なんて一人しかいない。
「シルバ様!」
ソファーの前に座って手当てをしてくれていたニーナが立ち上がる。
脇に控えていた侍女や、護衛の者も慌てて頭を下げる。
シルバ………
後宮へ訪れたのは、やはり思った通りの人だった。
若くしてこのアーク王国を統べる国王。
漆黒の髪から覗く紅の瞳は、私を捉えた瞬間、苛立たし気に細められる。
ズキッ――――
僅かに胸に走った痛みに眉を寄せる。
そして、その視線から逃れるように、フイッと顔をそむけた。
「手当は終わったか?」
シルバの明瞭な声が後宮に響く。
「はい、今終わったところです。」
ニーナがシルバの問いに素早く答える。