白銀の女神 紅の王
我が国を手中に収めようと目論んでいる国の報告書だ。
見ないわけにはいかない……
……が、やはり集中できない。
時刻を見れば、ちょうど日付が変わった頃。
クソッ………
読みかけの報告書もそのままに、椅子から立ち上がる。
心配……?
そうじゃない、ただ、護衛が仕事をしているか見に行くだけだ。
適当な理由を付けて、執務室を出た―――
そもそも、アイツは寝付けているのか?
静かな廊下を歩きながら考える。
あの事件以来、後宮に帰る様になった時から…
エレナは、必ず、寝ずに俺の帰りを待っていた。
そして、安心したように眠りにつく。
それが、習慣だった。
習慣とは怖いもので、たった一日、後宮に帰らないだけでも気になる。
無意識に、後宮への足を速めていると……
廊下の先に、小さな影が映る。
距離を縮め、明らかになる容姿―――