白銀の女神 紅の王
と言っても、私の荷物はほとんどなかったので、用意と言っても数分あれば十分だった。
準備は終わったのだが……
最後に、しておかなければならない事があった。
もしかしたら、もうここには戻ってこられないかもしれないから。
そう思って、紙にペンを走らせる。
これだけは、シルバに伝えておかなければいけなかった。
ものの数秒で書き終わった手紙は、質素な封筒に入れて、机の上に置いた。
「準備が出来ました。」
そう言って、イザベラの方を向く。
「では、行きましょうか。」
さようなら……
部屋を振り返り、懐かしむように心の中で別れを告げる。
そうして、私は後宮を去った―――
後宮を出てから、裏門まで来るのは案外難しくはなかった。
シルバが護衛の半数を連れて行っているからか。
いつも傍にいるニーナがいないからか。
皆、私とイザベラが一緒に歩いているのも気にしていない様子だったし…
何にしても、ここまで、誰にも怪しまれずに来れたのは幸いだった。