白銀の女神 紅の王
しかし――――
いつもここで、自分の帰りを待つ者はいなかった。
「シルバッ!」
静寂しきった後宮に、騒々しくウィルが入ってくる。
その後ろには、デュークや護衛の姿もあった。
「これは、どういうことだ?」
恐ろしいくらいに低く響く声。
「エレナさんが、王城からいなくなったと…。」
「それは分かっている。俺が聞きたいのは、何故エレナが王城からいなくなったか、だ。」
珍しく、ウィルにまで声を荒げる。
すると、答えたのはウィルではなく、後ろに控えていた護衛だった。
「そ、それについてですが、エレナ様自ら出て行ったのではないかと思われます。」
「ほぉ……その根拠は?」
コイツは確か、後宮の護衛をしていた奴だな。
耳を傾ける価値はあるだろう……
「後宮に何者かが侵入した形跡はありませんでしたし、最後にエレナ様をお見かけしたのは、この後宮を出て行かれる所でしたから。」
男の言葉のある一部に、ピクリと反応する。
「お前は、エレナを一人にして後宮から出したのか?」
地を這うような低い声。
後宮に侵入を許した事があって、護衛を置いたにもかかわらず、その護衛がエレナを一人で部屋から出してどうする。