白銀の女神 紅の王
ひとしきり腹の底から笑った女は、ピタリと笑うのを止め―――
「今更気付いてももう遅いわ。貴方の大切なお姫様は、もうここへは帰ってこない。」
真っ直ぐと見据えられた紫色の瞳が、面白そうに煌めく。
それは、敵陣の真ん中にいるような者の瞳ではなかった。
何処か愉しんでいる様な、覚悟を決めていた様な瞳だった。
「エレナをどこへやった。…お前の共犯者は誰だ。」
この女が、まだここにいると言う事は、エレナを先に逃がしたと言う事。
となると、当然、共犯者がいるはずだ。
しかし――――
「言うわけないじゃない。」
フッ…と口角を上げ、そう吐き捨てるイザベラ。
まぁ、そうなるだろうな。
吹っ切れた様な笑いを零す、この女の口を割らせるのは難しい。
……だが、今日は抑えられない。
ガシッ―――――
イザベラの腕を加減の効かない力で掴み上げる。
途端、痛みに眉を寄せるイザベラ。
「シルバッ!」
焦った様なウィルの声が聞こえるが、関係ない。
「もう一度チャンスをやる。……エレナをどこへやった。」
低く、地を這うような声で唸る。