白銀の女神 紅の王
「ッ……貴方も大切な人を亡くす苦しみにもがけばいいのよ!」
纏う空気が冷たくなったことを感じ取り、一瞬ひるんだものの、イザベラは最後までエレナの居場所を吐かなかった。
クソッ………
焦りと、苛立ちで、顔が歪む。
一国の王が、こうも感情を前に出してはならないことなど忘れていた―――
「この女を地下牢へ閉じ込めておけ!」
チッ……と悪態をついた後、後ろに控えていた護衛にそう告げ、部屋を出る。
エレナの居場所を言わないと言うならば……
普段の冷静さなど、微塵もなかった。
考えるよりも前に、足が動く。
「シルバッ!?」
「どこに行くんだ?」
ウィルの焦った様な声と、デュークの落ち着き払った声。
全く声色の違う二人が、呼びとめながら後ろをついてくる。
「決まっている、エレナを連れ戻す。」
後ろも振り返らずに答える。
言葉ではそう言いながらも、頭の中では葛藤が繰り広げられていた。