白銀の女神 紅の王



「ッ……貴方も大切な人を亡くす苦しみにもがけばいいのよ!」

纏う空気が冷たくなったことを感じ取り、一瞬ひるんだものの、イザベラは最後までエレナの居場所を吐かなかった。




クソッ………


焦りと、苛立ちで、顔が歪む。

一国の王が、こうも感情を前に出してはならないことなど忘れていた―――



「この女を地下牢へ閉じ込めておけ!」

チッ……と悪態をついた後、後ろに控えていた護衛にそう告げ、部屋を出る。




エレナの居場所を言わないと言うならば……




普段の冷静さなど、微塵もなかった。

考えるよりも前に、足が動く。


「シルバッ!?」

「どこに行くんだ?」

ウィルの焦った様な声と、デュークの落ち着き払った声。

全く声色の違う二人が、呼びとめながら後ろをついてくる。



「決まっている、エレナを連れ戻す。」

後ろも振り返らずに答える。

言葉ではそう言いながらも、頭の中では葛藤が繰り広げられていた。



< 293 / 531 >

この作品をシェア

pagetop