白銀の女神 紅の王



「では、始めましょう。」

フォレスト伯爵の合図と共に、男がこちらに視線を合わせる。


その視線を受け止め、男の心を読むことに集中した。

けれど、見えてくるのは、やはり真っ暗なイメージばかり。



……ッ……もう一度……

この小屋にいる皆が、私に視線を注いでいた。



緊張しているだけよ……

次は、きっと出来るわ。

私は、帰るの……


王城へ――――

シルバの元へ―――




そう強く願うが、結果は先程と同じ。

それでも、諦めきれなくて、何度も繰り返す。

だから……

短い間に、何度も能力を発動させることのリスクなど忘れていた。

その時、私を動かしていたのは、“帰りたい”という想いのみだったから…



しかし、体にかかる負担は否応なくやって来る。

呼吸が乱れ始め、段々と奪われていく体力。

ハァハァ…と荒い呼吸をする度に、視界が揺らぐ。




「ハァ…ハァ………ふっ…っく…なんでっ……なんで見えないのぉ……。」

眉を寄せ、ぼろぼろと涙が零れる。



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