白銀の女神 紅の王



あの男…


それだけの言葉で十分だった。

私とロメオが思い浮かんだ人は、きっと同じ人。




「何故ですエレナ様……。あの男は、貴方を無理やり奪った男ですよ?」


「けれど、私はシルバを愛しています。」


真っすぐと、ロメオを見据えて言う。

確かにシルバは、私を無理やり王城に連れてきた。

けれど、惹かれたのは私。

この想いは、確かなものだった。



私の想いを知ったロメオは、クソッ…という悪態の声の後―――


「ッ……あの男になど、渡してたまるものかッ!」

ロメオは、今までの穏やかな喋り方とは一変して、激情する。

こんな所も、親子でそっくりだ…などと言う呑気な考えは、すぐに消えた。



「貴方は私のものだッ!」

シルバに向けられたものか。

それとも、私に向けられたものか。


憎悪と言う激情をぶつけるように、私に覆いかぶさるロメオ。

上から押さえつけられ、首筋に唇を寄せられる。



「いっ……嫌ッ……。」

再び走った、唇の感触に、体全体で抵抗した。

しかし、一向に緩まない拘束。

首筋、鎖骨に振って来る口づけは止まない。


「いやぁ……やめて……シルバ…ぁ……。」

弱々しく否定の言葉を上げながら、ボロボロと零れ落ちる涙。

無意識のうちに、この場にいない愛しい人の名を呼んでいた。





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