白銀の女神 紅の王
ましてや、向こうの方が早くに王城のある中央区を出ている。
こちらの動きに気付かれていないとしても、国境を超えるまでに間に合うか間に合わないかぐらいだろう。
そう思うと、焦る気持ちに拍車がかかる。
エレナが、ギルティス王国に連れられる?
しかも、あのフォレストとその息子と共に…
そんな事、させてたまるか…ッ!
必ず連れ戻す。
それに………
エレナが泣いている――――
そんな気がした……
銀色の瞳に、涙を溜めて。
細い肩を震わせながら……
不意に、あの日の夜を思い出す。
エレナの涙を初めて見たあの夜。
心臓を鷲掴みにされたかのように、胸が苦しくなり、目の前の存在を抱きしめたい衝動にかられた。
“人の心を読める”能力を持っているのに、上手く立ち回る事が出来ず。
世の中を上手く渡れないエレナ。
今回の事だってそうだ。
イザベラの言う事をそのまま鵜呑みにするなど、どこの馬鹿正直者だ。
その日初めて会った者の言葉を信じる奴があるか。
―――否、エレナは信じてしまうのだ。