白銀の女神 紅の王
あの容姿と、あの能力、そして10年間の監禁。
親にまで捨てられ、人と接することのなかった10年。
それは、エレナに孤独を与えた。
だからこそ、自分に接してくれる者は皆良い人だと思いこんでいる。
純真無垢で、汚れを知らないエレナ。
そんなエレナが、苛立たしくて、もどかしくて。
………けれど、目を離さずにはいられなかった。
今も、恐怖に涙を流しているのだと考えれば、ざわざわと胸のざわめきが治まらない。
女の涙など煩わしいだけ……
そんな事は忘れるくらいに、焦燥感を駆り立てられていた。
「シルバッ…待ってください!」
ハッ…と、ウィルの声に我に返る。
後ろを振り向けば、既に開いている距離。
まだ、後を追いかけてきている世だが、それも時間の問題だ。
「追いつき次第、ギルティスとの国境に布陣を敷いておけ。いいな?」
そう言い残して、再び前方を見る。
万が一、他のルートからの逃亡を図られれば、それで終わり。
それに、軍を一カ所に集中させるのは避けたい。
「待て、シルバ……クソッ……!」
暫く後ろにデュークがついて来ていたが、それさえ振り切って、イースト地区北東部を目指して、馬を加速させた。