白銀の女神 紅の王
怪しいな……
もう一度、声をかけようとした刹那――
バッ―――――
その者はクルリと反対方向に体を向け、走り出した。
「ッ……!?オイ、待て!」
突然走り出したのを追って、馬を走らせる。
しかし、慌てる必要はなかった。
走る、といってもそのスピードは遅く、馬を下りてでも追いつく程だ。
フラフラと走るその者の進行方向に、馬を走らせ先回りする。
そして、その者の目の前で馬から降りた―――
「ッ………!」
息を飲む音を聞きながら、腕を捻り上げれば―――
「きゃっ………。」
きゃっ……?
聞こえてきた小さな悲鳴は、明らかに女のもの。
なぜ、こんな山奥に女一人で歩いているのか…
バサッ――――
そんな疑問も、被っていたフードを取った瞬間、吹き飛んだ。
剥ぎ取ったフードから零れ落ちたのは、朝焼けに照らされ、眩しいくらいに輝く銀色の髪。
首元に見えた肌は、透き通る様に白い。
そして、ダイヤモンドをはめ込んだかのように銀色の色彩を持つ瞳は、今はギュッとつぶられた瞼に隠されている。