白銀の女神 紅の王
思わず、逃げるようにして後ずさりすれば、シルバの強い腕に引き寄せられる。
たどり着いたシルバの胸の中で、上を見上げれば、笑みを浮かべたシルバが、フォレスト伯爵を見据えていた。
「親子そろって、女一人に逃げられるとは笑い者だな。」
フンッ…と、馬鹿にしたような嘲笑を向けるシルバ。
それを受けとったフォレスト親子は、ピクリと表情を歪ませ…
「私はもうその女には用はないのですがね。」
ドキッ――――
心臓が嫌な音を立てる。
フォレスト伯爵は、私が能力を使えなくなった事を知っている。
“もう用はない”
この言葉の意味をシルバが知ってしまうと思うとコワイ。
これ以上言わないで……と願いながら、続くフォレスト伯爵の言葉を聞けば…
「ロメオがどうしてもと言うので、探しに来たのですが、思わぬ収穫がありました。」
願いが通じたのか、話は別の話題へと方向を変えたようで、ほっと安堵する。
「まさか、アーク王国の国王であらせられるシルバ様がお一人でこのようなとこにおられるとは……。」
ニヤニヤと…まるで獲物を見つけたかのように笑うフォレスト伯爵。
対するシルバも、この状況に怯む素振りは全く見せず…
「ほう…それは奇遇だな。俺も中央区から遠く離れたこのイースト地区でお前に会えるとは思わなかったぞ。」
もう、フォレスト伯爵が黒だと分かっている筈なのに…
楽しそうにそう言うシルバは、獰猛な顔つきをしていた。
「そんなに兵士を引き連れてどこへ行く。旅行にしては、少々護衛が多すぎやしないか?」
口では面白そうに。
しかし、鋭く、睨む様な視線が、フォレスト伯爵を貫く。