白銀の女神 紅の王
「ッ……ジェス!」
目の前には、いつの間にか移動したジェスがいた。
ゆっくり後ずさりする。
今は私の知っているジェスじゃない…
敵…だから…………
ジェスは無言で私の腕を掴み―――
グイッ…と引き寄せられる。
「きゃっ……!」
握られた力の強さと、突然腕を引かれたことの衝撃に、小さな声を上げれば…
「エレナッ!」
フォレスト伯爵の部下と交戦していたシルバが、こちらに向かって叫ぶ。
そして、シルバの注意がこちらに逸れた瞬間を狙った部下達は、それを好機とばかりに一斉に切りかかった。
「くッ…………。」
これには、さすがのシルバも応戦出来ず、かわそうとしたギリギリのところで、剣が頬をかすめた。
漆黒の髪が、何本か空に舞い…
頬をツーっと伝う、赤いもの。
「っ……シルバッ!」
自分の声とは思えないほど大きく響く声。
ジェスの腕で、もがくように暴れながら、シルバの名を呼んだ。
「ッ……暴れるな!」
ジェスの声は耳に届いていたけれど―――