白銀の女神 紅の王



「ッ……ジェス!」

目の前には、いつの間にか移動したジェスがいた。

ゆっくり後ずさりする。



今は私の知っているジェスじゃない…

敵…だから…………



ジェスは無言で私の腕を掴み―――

グイッ…と引き寄せられる。



「きゃっ……!」

握られた力の強さと、突然腕を引かれたことの衝撃に、小さな声を上げれば…



「エレナッ!」

フォレスト伯爵の部下と交戦していたシルバが、こちらに向かって叫ぶ。

そして、シルバの注意がこちらに逸れた瞬間を狙った部下達は、それを好機とばかりに一斉に切りかかった。



「くッ…………。」

これには、さすがのシルバも応戦出来ず、かわそうとしたギリギリのところで、剣が頬をかすめた。



漆黒の髪が、何本か空に舞い…

頬をツーっと伝う、赤いもの。



「っ……シルバッ!」

自分の声とは思えないほど大きく響く声。

ジェスの腕で、もがくように暴れながら、シルバの名を呼んだ。


「ッ……暴れるな!」



ジェスの声は耳に届いていたけれど―――



< 379 / 531 >

この作品をシェア

pagetop