白銀の女神 紅の王
それは、まぎれもない恐怖。
恐怖など、いつ振りだろうか。
久しぶり…いや、初めてと言っていい感覚に戸惑う。
両親を亡くした時は、恐怖や悲しみよりも、憎しみの方が勝っていて…
その時は、両親を殺した反逆者どもに復讐する事しか考えていなかった。
返り血を浴びるのも構わず、目の前の反逆者を殺す事しか……
だが……――――
今は明らかに恐怖が支配している。
エレナを失うかもしれないと言う恐怖に…
何故だ……?
エレナの能力が惜しいからか?
いや……違う。
事の黒幕であるフォレストは、もう捕まった。
反逆者を暴きだした今、エレナの力はもう必要ないはずだ…
だと言うのに――――
「エレナッ!」
俺はエレナの名を呼び続ける。
デュークと部下たちの唖然とした様子など気にも留めず……
その理由は?
ピクリとも反応しないエレナに、こんなにも焦燥感が募るのは?
どんどん冷たくなっていく体に、震える己の手が示すのは?