白銀の女神 紅の王
人間の汚い部分を多く見てきた俺は、信じられなかったんだ。
エレナの純粋な心が……
黒い部分を見てみたい―――
純粋な顔など仮面だ――――
そう思っていた。
けれど、エレナはどこまでも清く、純粋だった。
その心は、汚れなき白。
白銀の髪と瞳は、エレナ自身の内面を表しているかの様……
イザベラの事を疑いもせずに信じた事。
そして、ジェスに裏切られた今も、恐らくジェスの事を微塵も恨んではいない事も。
それは、ジェスの拘束から逃れる時に使ったであろう短剣が、鞘に収まったままだったと言う事が示している。
そんなエレナを見ていると、どうしようもなく苛立ち…
どうしようもなく心が掻き乱されるのを感じた。
気付けば、目がエレナを追い、心を占めるのはエレナの事ばかり。
エレナに想われるジェスが憎く。
エレナに微笑みかけられるデュークに嫉妬した。
俺は、いつの間にか惹かれていたのだ。
孤独と裏切りの世界にありながら、一点の曇りなく光り輝く…
“白銀の女神”に――――
しかし……――――
皮肉にも、エレナの死に直面して、自分の想いに気付こうとしている。