白銀の女神 紅の王
ズッ……――――
うっ……というエレナの小さな呻き声と共に矢は抜けた。
痛がってうめいた小さな声に、弱々しくも、しっかりと心音を刻むその様子に、ほっと安堵する。
エレナは、まだ生きている……
傷口に口を寄せ、出来る限り毒の入りこんだ血を吸い、吐き出す。
そして、溢れ出る血を素早く抑え、消毒した後に包帯で傷を覆った。
これで、傷の化膿は抑えられるだろう。
しかし……―――
エレナの顔色は、依然として悪いままだった。
「解毒薬はないのか?」
デュークが、救護班へ問えば…
「王宮へ戻ればあるのですが……」
そう言って、申し訳なさそうに目を伏せた。
「王城まで戻っている時間はないな。」
苦々しく、そう言うデューク。
その通りだった。
ここは、ギルティスとの国境に接した地区。
王城へ戻るのには時間がかかる。
それに、エレナのこの様子で王城まで耐えられるかも不安だった。