白銀の女神 紅の王
「…………?」
ベッドの淵まで来たところで、あるものが視界の端に映った。
それに引かれる様に、目線で追えば…
紙………?
シルバの足元に落ちている白い紙。
力の入らない腕で体を支えながら、その紙を拾い上げる。
クルッと反転させて内容を見ると、それは、机上にある書類の一部である事が分かった。
きっと、仕事をしている内に眠たくなって、落としてしまったんだわ…
そんなになるまでに、この仕事は急を要するのだろうか。
主犯のフォレスト伯爵が捕まったのなら、もう急ぐはずはないはずなのに…
こんなにも疲れを溜めてまで、早く片づけなければならない理由があるのだろうか。
疲労の色をにじませた目元を、胸の痛くなる想いで見ながら、机に紙を戻す。
カサッ―――――
薄っぺらい一枚の紙を机の上に置いただけなのに、静寂が支配していた後宮には、殊の外大きく響いた。
咄嗟にシルバの方へ視線を移せば、僅かに眉を動かすシルバ。
睫毛を揺らす動作は、今まさに目を開こうとするかの様な動きで…
「ッ………!」
慌ててベッドの中央まで体を引き戻す。
ど、どうしよう……!
どうしようも、こうしようも、逃げる場などこの後宮にはなく、逃げる為の体力もないのだが…