白銀の女神 紅の王
しかし――――
「…………?」
急いで駆け寄ったのに、シルバはこちらを見つめて、その場から動かない。
すぐにでも後宮を出て行ってしまいそうな雰囲気を出していたのに…
じっと見つめる紅の瞳。
不意に、デュークの言葉を思い出す。
『解毒薬は口移しで飲ませていたぞ。』
ニヤニヤと笑いながら、からかい交じりに聞かされた話。
その話を思い出し、ボンッと音がしそうなほどに顔を真っ赤にして…
「あの…行かないんですか?」
こちらをじっと見つめる紅の瞳をチラチラと見ながら、そう言えば…
「ニーナ。」
「はい!」
私の方を見たまま、ニーナを呼ぶ。
弾かれる様に答えたニーナが駆け寄ると…
「エレナに何か羽織るものを。」
「はい!」
シルバの言葉に、瞳を見開く。
「こちらで良いですか?」
ニーナが持ってきたのは、少し厚手のショール。
それを受けとったシルバは、ふわりと私の肩にかけた。
驚いた表情でシルバを見上げれば――
「地下牢は寒い。また寝込まれては困るからな。」
不機嫌そうな表情をしながらそう言う。
ぶっきらぼうでも、私の心には温かく響いた。