白銀の女神 紅の王
「だが、お前は一向に俺の心を読んでいる様な素振りも見せないし、そればかりか、騙している俺の事を信頼してくれた。」
「それは、お互い様よ。貴方だって、嫌々でも私の能力を恐れずに傍にいてくれた。」
だからおあいこ……
私は、貴方が私の知るジェスだって分かっただけでいいの。
「ずっと見守っていてくれてありがとう。ジェスと出会えて良かったわ。」
フフッと、地下牢のじめっとした空気に似つかない声を上げる。
すると、ジェスもやっと笑みを浮かべ…
「妹が生きているなら、このくらいだろうな。俺は、いつしかお前と妹を重ねていたようだ。……いや、妹とは少し違うか。」
クスッと、面白そうな声が地下牢に響く。
「ジェス?」
不思議に思って、声をかければ―――
「あぁ…何でもない。」
穏やかな表情で、そう言われた。
それは、二人酒場の地下室で過ごしていた時間が流れているようで。
久しぶりに見たジェスの穏やかな表情に、心がほっと温かくなる。
けれど―――――――
あの頃の様な、温かな笑顔、温かな時間に忘れかけていた……
この時間が限られている事を。
「これで、もう思い残すことはない。」
「え?」
ジェスの言葉に、疑問の声を上げる。
そして、次の瞬間、ハッと我に返った。
今までの雰囲気が嘘のように、冷え返る。
そう感じたのは、私だけかもしれない。