白銀の女神 紅の王
ツキンッ…――――
胸を刺す様な小さな痛み。
立ち直れない様な大きな痛みではないけれど、確実にこの胸にあるもの…
こればかりは、いつになっても慣れない。
溜めこんだ空気をゆっくり吐き出す。
心を鎮めながら窓の外を見れば、フォレスト伯爵とロメオが馬車に乗り込もうとしていた。
二人が馬車に乗り込むのを見ていれば…
ふと、フォレスト伯爵がこちらを向く。
「ッ………!」
ねっとりと粘着質な視線が、私を捉え…
ニヤリ………
片方の口角を吊り上げ、あの嫌らしい笑みを浮かべた。
ゾクッ――――
つま先から頭のてっぺんまで、這う様な悪寒に震える。
何故笑ったの……?
笑みを向けられた理由が分からないからこそ怖かった。
また何か企んでいると言うの?
ううん……大丈夫よ…
だって、フォレスト伯爵は、二度とこの国には帰れないのだから。