白銀の女神 紅の王
そう思ったのだが…
「歩かせていたら、また転ぶ。」
その一言に、うっ…と言葉に詰まった。
きっと、もう転ばないと言ったところで信じてもらえないのだろう。
そう思って、シルバの腕の中で押し黙る。
嬉しいのに……
心の端で悲しさを感じるのは、後ろめたい気持ちがあるから。
私は、シルバが一番欲する力を失った…
“人の心を読む力”
これだけが私の特権だった。
私にしかない、私だけの能力。
シルバも、私にこの能力があるからこそ見放さないでいてくれたのに。
今だってそう……
シルバはまだ私に能力があると思っているから。
さっきまであんなに不機嫌だったと言うのに、今はこんなにも優しい。
けれど、それもきっと私に怪我をされては困るから、仕方なしに気にかけてくれているだけのこと。
私には、もうそんな価値なんてないのに…
嬉しいのに悲しい。
そんな相反するやりきれない想いが胸中を支配する。
「なんで…そんなに優しいんですか?」
ポツリと小さく呟いた言葉は、かろうじてシルバに届く。
しかし、当の本人は…
「どういう意味だ。」
意味が分からないと言うように、眉をしかめながら応えた。