白銀の女神 紅の王



「お前は国よりもエレナを優先するというのか?」

冷たく引き離すような声で問う。



「そうではありませんけど…。あんなに辛い経験をなさっていて、これから先更に辛いことを強いるなど可哀想で…」

ウィルは眉尻を下げ、苦しそうに表情を歪める。



「エレナが決めたことだ」

眉一つ動かさず言い放つ。



「強制的に…の間違いじゃありませんか?」

あぁそうだ。

俺は奪うことでしか手に入れられない。

そう頭の端で思いながら静かに口を開く。




「もう引き返せない。エレナも……俺も」

「そう…ですね。僕も貴方について行くと決めた日から、引き返すことは諦めました」

顔に走った僅かな変化を察し、ウィルもやっと従う。

どうやらあの約束は違えるつもりはないようだ。

この国の再建と自分への忠誠を誓ったあの日の約束を。





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