白銀の女神 紅の王
お酒の匂いが嫌だ…
煙草の匂いが嫌だ…
下品に笑う男たちの声が嫌だ…
好奇な目線を向ける遠慮ない男の視線が嫌だ…
……けれど言ったところで何が変わるわけでもない。
私にはそんな事を言う権利すらないから。
まだ客で賑わっている賭博場の裏方―――
「おい、エレナ!」
今日も大声で怒鳴る私の主人。
呼ばれるままにこの賭博場のオーナーである主人に答える。
「は、はい、ウォルター様」
いつ聞いても慣れないこのどら声。
上ずる声を抑えられないまま主人の名を呼ぶ。