白銀の女神 紅の王
それはいきなりの事だった―――
前王アイザックスの治世下で権力をふるっていたフォレストが珍しく宴に来たかと思えば、息子連れで。
親子揃ってエレナに熱い視線を送り、何故か苛々としながらも反逆者の可能性のある親子を探るべく、エレナに心を読ませていた時……
ピンと張った糸が切れるようにエレナの体が自分の方に倒れてきた―――
「おい、どうした?」
ちょうど自分の膝の上に倒れかかって来たエレナの体を揺するが、身動き一つしない。
息はあるようだが、眉を寄せ苦しそうな表情をしている。
「クソッ…」
くにゃりと力の入っていないエレナを抱き上げ、立ち上がる。
「フォレスト伯爵、すまないがエレナの体調が悪いようなので失礼する」
「えぇ、エレナ様をゆっくりと介抱してあげてください」
手短にそう言えば、フォレストはニヤニヤとした嫌らしい笑みを浮かべる。
対する息子の方はエレナを抱く俺に怯えながらも、嫉妬の入り混じった視線をよこす。
フォレスト親子に対する不信感は募る一方だが、今は深く追求する暇もない。
皆の視線が集まる中、エレナを抱き宴の会場を出た。