白銀の女神 紅の王
「シルバ…ッ…どうしたんですか?」
後宮への道のりを足早に歩いていると、後ろから追いかけてきたウィルが心配そうに伺う。
「医官を後宮に呼べ。エレナが気を失った」
「…ッ…分かりました。すぐに後宮へ連れて行きます」
そう言ってウィルは別の方向へと走って行った。
後宮に向かう歩を速める。
こんなにも歩く振動で揺れているのに、全く目を覚まさないエレナ。
クソッ……
一体何だと言うのだ……
訳の分からない苛々とした感情が支配していく。
バンッ――――
後宮の扉をいつも以上に荒々しく開けて入る。
そして扉を開けた時とはまるで違う、ゆっくりとした動作でベッドにエレナを下ろす。
自分でも気付かぬうちにそっと下ろす様にして…
ベッドに下ろしてもエレナは固く閉じた瞳を開くことはない。
顔にかかった銀色の髪を払ってやれば、その血色のない頬に指先が触れる。