白銀の女神 紅の王



「ッ………!」

その頬は思いのほか冷たかった。



クソッ……なぜ目を開けない……

ベッドにぐったりと体を沈めるエレナに何故か焦燥感が襲う。

自分の体温を分けるかのようにしてエレナの頬にすべらせる。

心の中は大いに焦っていた。




しかし、バタバタと後宮へ走ってくる複数の足音を聞いて手を引っ込める。


バンッ――――

ウィルも焦っているのか、いつになく荒々しい力で扉が開いた。



「シルバッ……医官を連れてきました」

後宮に入って来たのはウィルとニーナ、そして王族お抱えの医師。



「エレナ様のお加減はいかがですか?」

王城に使える医官の中でも一番古いその医師が問う。


「まだ目を覚まさない」

苛立ちを抑えながらそう言って、医師をエレナの眠るベッドへ招く。

そして、その医師を中心に皆が心配そうな表情でエレナを囲む。

ニーナなどはすでに涙を湛えて、今にも溢れ出そうだ。



< 86 / 531 >

この作品をシェア

pagetop