誘拐犯は私の彼氏!?
おばちゃん、だれ?
この質問がでるまで、随分と時間がかかった気がする。
ただ、言葉がでなかった。
いきなり広間から連れ出された僕は、しばらくこの人についていくしかなかったんだ。
困惑する頭をなんとか落ち着かせた頃、女の人を見上げる。
ふんわりとミルクの香りが漂う、さらさらの長い髪。
パッチリした大きな目をもつ、幼い顔。
抱かれてる赤ちゃんとそっくりだ。
その赤ちゃんは眠ってしまっている。
結局その日、その人は「華道の天貝先生」としか答えてくれなかった。
「また明日。」
そう言い残し、僕をお父さんに預けて、そのまま見えなくなる。
―光沙さん。
それがあなたのお母さま、里沙さんと私の出会いです。